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「自然の叡智」をメインテーマとする2005年日本国際博覧会の開催にあわせて準備されたこの展覧会は、広大な地域にまたがるアジアの多様な美術の中でも、東南アジアの島嶼部(とうしょぶ)- インドネシア、カンボジア、タイ、台湾、フィリピン、ベトナム、マレーシアそして日本など、主として海上交易によって結ばれていた地域の美術を対象としています。この地域の、時代を超えて海と島に条件付けられた人々の造形を見ることを通じて、自然と人間、そして人間の手で生み出された「もの」との関係について、 改めて思い巡らす機会を提示しようとするものです。
展示作品には、縄文土器などの古代の造形物に始まり、円空や木喰など近世の木彫、高村光太郎など近代の彫刻、毛利武士郎らの戦後の彫刻、東アジア地域の民族的な美術、そして現代の美術や陶芸までが含まれます。こうした様々な作品を、「彫り刻む」、「染める」、「手で形作る、あるいは成型する」と「肉付けする」といった手仕事の技法の観点から構成しました。
この展覧会では、そうした手わざに注目し、海によって隔てられながら、海によって交流のあった地域の「もの」づくりに光をあててみます。そこには、形式と秩序を重んじた大陸の文化とは異なり、相互に異なる言葉や文化の壁を越えて、言葉で伝えられなかった人々の知恵が、「もの」づくりのなかに息づいているように思います。人と自然の間に息づく「もの」を通して、生命の根ざす河床を探ってみたいと思います。 |